※うまい映画とは、撮り方が上手いのはもちろん、「おいしい」という意味です。
うまい映画を見るたびに、なぜ自分が料理人の道に進まなかったのか自分の人生を悔やむ事がある。最初にそう思わせてくれたのが『コックと泥棒、その妻と愛人』です。
美術にジャン=ポール・ゴルチエが参加した、とても豪華な映画です。
泥棒が経営するレストラン、自慢のシェフの味を求めて泥棒は妻と部下を引き連れ、毎夜お客でごった返しているお店に訪れます。
泥棒の夫に妻は嫌気がさしていました。そして、妻はいつしかお店に来る上品で知的なお客に恋心を抱き始めます。主人の目を盗んで彼との関係を深めていきます。自慢のシェフはその浮気を観てみぬふりをします。そんな、レストランの一週間を描いた映画です。
シーンで切り替わる色彩
外は藍色、厨房は緑、フロアーは赤、トイレは白。
奇才ゴルチエの才能はファション界の外でも放たれています。シーンが移るたびにその部屋の色がガラッと変わります。出演者が移動するたびに衣装も代わり、その見事な演出は全く違和感なく映画の世界観を広げます。また、その舞台に負けないストーリー性は圧巻です。
いつしか泥棒は妻の異変に気づきます。レストランで席につくと直ぐにどこかに言ってしまう妻を疑い始めます。そして、とうとう二人の浮気の証拠を見つけてしまいます。最後の最後に大きな結末が待っています。ここまで食という物がエロチックで艶かしい物とは思いもよりませんでした。
テーブルごとの物語『ディナー・ラッシュ』
そして、今日もまた、人生を振り返った映画と出会いました。
『ディナー・ラッシュ』です。NYの有名イタリアンレストラン店の一夜を舞台にした映画。ほぼ全編にわたり厨房がメインに繰り広げられます。
その晩、レストラン「ジジーノ」では開店して初めてのお客で繁盛します。スタッフもその晩の異常さに驚きます。レストランには、腕利き副シェフがこしらえた借金の取り立てに2人組のギャングが現れたり、有名画廊のオーナーがアーティストを引き連れ店に飾ってある絵を批評し、オーナーの息子の名シェフは自分の過去に抱いた有名料理記者のお世話などありとあらゆることが起きました。
こう書いてしまうとコメディーの様におもう人もいると思いますが、それぞれのテーブルで繰り広げられる話は、やはりレストランの中にいる感じです。それぞれのテーブルではそれぞれの話をしているのですが、そこに共通して料理があり、ワインがあります。
そんなにグルメではないのであまり良い食生活とはいえないのですが、たまにはおいしい料理をおいしく食べられるお店に行ってみたいって思います。特にこういう映画を見た時は強く感じます。