「全裸監督」がヤバイ!。さすがNetflix。 こんな邦画ドラマは観たことがない。地上波では絶対に味わえないカッコいい日本ドラマがまさにここにある。
何がヤバイってこのドラマの全てがやばすぎる。特に演出と美術がヤバイ。もちろん出演している俳優がみんなカッコイイし、話やストーリー展開も面白いんだけど、それ以上にドラマにひきずりこむ細い演出や美術がヤバイ。
全裸監督とは
私が全裸監督を語れるほど村西監督を知っている訳ではないので、興味のある方はネットや本で調べて欲しい。私が知っている範囲ではイレブンピーエムを深夜眠い目で観ていて、その番組に黒木瞳が脇毛を出して、エマニエル夫人の椅子に座っていることくらいだ。すでに西村監督自体もそれほど映像は撮っていなかったと思う。なので、何も語れない。
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しかし、そんな当時のことを知らな私でも、このドラマには引き込まれる。
再現し尽くしている映像
よくドラマでやらかしてしまうのは、その当時の状況が再現し尽くせないことだ。あのみんなから集めたお金で作成されている、2019年のNHKの大河ドラマ「いだてん」でも、当時の様子を十分に再現できていない。
例えば、「いだてん」こと金栗四三がストックホルムの次の大会であるアントワープで走るシーンなどは廃墟を演出したいかにもセットを走る様子になっている。苦しまぎれの演出でドラマ自体には支障は出ないが、やはり没入感という意味では感情が入り込めない。
その点、Netfilexの細かいところまで行き届いた美術は凄まじい。この点は競合に当たるAmazon Primeとは雲泥の差だ。さすがこの時代でコンテンツだけで成功している勝者だと言える。
Amazon Primeでもオリジナルドラマを作成している。以前ストーリーが面白そうでドラマを観ていた。「高い城の男」というドラマは第二次世界大戦で、もし日本軍とドイツ軍が勝利を納めたらという話だ。ここまでは面白く感じるが、映像を観るとがっかりする。特に日本人としてこの作品を観てしまうと、数話観て飽きるだろう。
例えば、日本人同士が話すシーンですら日本語を使わず流暢な英語を話している。さらに、オフィスのドアは障子で、必ず鎧兜が置いてある。日本を知っているがゆえにどうも違和感を感じてしまう。
無理やりな演出
こういう演出があると、観ている側としてはドン引きする。感覚がありえないのだ。架空の話だから何があっても良いのだが、民族的な美意識はそれほど大きく変わらないと思う。
なぜ、こんなことが起きるのか。たぶんそれは文化への理解が低く演出や美術自体の重要性をそれほど感じていないからだと思う。さらに、無理な設定だからこそ、つじつまを合わせようとしておかしくなってしまう。いくら戦争に勝ったら日本だからといって大臣が易はやらない。これは根底から日本の文化を知らなすぎる。 小説などであれば細かい演出や美術を悩む必要がないが、映像にんるとどうしても気になってしまう。
であれば、そのシナリオを死守するのではなく、むしろ没頭させるための美術やリアルな演出ができる方を選択し、シナリオをそれに合わせた方が良いのではと思う。つまり、映像コンテンツで重要なのは没入感であり、それを阻害する要因は一般的な重要な要素でも変更した方が良いのではと思う。
無理せず表現する
全裸監督がすごいのは、ちょうど再現しやすい範囲なんだと思う。例えば「Aleays 3丁目の夕日」は昭和30年代で、この当時の日本のセットを組もうとすると全て作る必要があり、莫大な費用がかかる。この年代を選んでしまうと費用が問題になる。逆に無理やりやってしまうと中途半端な美術になってしまう。 であれば、いくらシナリオが面白くてもそれを諦める勇気が必要になる。
そして全裸監督は、そこをあえて1980年代の内容にすることで無理なく絶妙な演出が可能になる。どうしても頭でっかちに考えるとシナリオを重視してしまいが、Netfixのオリジナルシリーズを観ているとその辺を絶妙に選択して表現している気がする。
全裸監督は日本全国民が観るべきドラマ
美術の話ばかりになってしまったが、「全裸監督」は日本全国民が観るべき作品だと思う。もちろん村西とおるという監督の半生が面白いのは間違いないが、それと共に日本の文化の根底を知ることができるドラマだと思う。
うちの子供達にもある年齢にきたら教えたい作品の一つだ。これは「アキラ」や「JoJo」「ナウシカ」などを教えるのと同じで、日本の根底を築いてきた文化だと思う。この文化があるからこそ今の日本があり、そして日本人の根底はこれしかないのではないかとつくづく感じる。
日本のかっこよさ
同じタイミングでNetfilxの「HERO=MASK」というアニメを観ている。このアニメは近未来のフランスの話を描いた日本のアニメでNetfilxオリジナルだ。内容も展開も、映像も非常に面白いが気になるのが、これをなぜ実写で作らないのかという疑問だ。日本のアニメはどれも素晴らしいと思う。しかし、なぜ「アニメ」なのか。
「HERO=MASK」は日本アニメ特有のファンタジーもなければ主人公の体が伸びたりもしない。少し人間の能力を拡張できるマスクを開発した犯罪組織と、それを追う近未来な警察の話だ。つまり、容易に実写にできるアニメだと言える。
このことについては「全裸監督」を観てなんとなく答えがでた気がする。それは、実写だとかっこ悪いのだ。日本人の俳優を使って、無理なアクションを取らせたり、無理な演出をするとかっこ悪いのだ。この文を読んでいる肩も、この流れで作られた失敗映画を多く知っているはずだ。
日本人の体型や文化背景だと、アニメを実写で表現するとあまりにもかけ離れている。だからかっこ悪さが先に来てしまう。しかし、「全裸監督」は全く違う。かっこいいのだ。全てがかっこいい演出になっている。
なぜか。それは映像が昔の「探偵物語」や「八つ墓村」「犬神家の一族」といったまさに1980年代くらいのドラマのテイストだからだ。
日本人のかっこよさを演出するのに一番良い見せ方は、あの年代のあの渋さなのではないかと思った。どうも欧米の映画などの演出を真似ようとしてもやはり限界があり、この表現ができる演出こそが日本人をいちばん日本人らしく引立てるのでないかと感じました。
展開が面白くどんどん惹き込まれる「全裸監督」を、一人でも多くの日本人の方に観て欲しいです。