Noriyasu_Katano's blog

脳科学や量子力学、政治や戦争に関して、日々の感じた雑感を書いていきます。

『最後の晩餐』に隠された解剖学的”謎”

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 第四回AI美芸研で解剖学者 布施英利先生の話は、「アンドロイドはウンチをするのか?」という題で先生の基本的な考えを話した。

この中でダビンチの話が面白かったので、書き留めて置こうと思う。

ダ・ヴィンチの解剖

ダ・ヴィンチはあの当時宮廷の画家として絵画や彫刻を創作していた。彼の描くものや作るものは、徹底した研究に基づいている。今の時代ではダ・ヴィンチを「画家」として捉えている方もいるかもしれなが、あの当時の画家というのは今の「アーチスト」と称されうようなものとは大きくかけ離れていると思う。

 彼は徹底したリアリティを追求した。ルネサンスの時代的な背景もあるが、彼は作品を作る上で何十体の遺体を解剖し、人間の骨格から人間を調べ尽くしスケッチをした。つまり彼の作るものは研究の上に成り立っていると思う。

ある一説にはミケランジェロが書き上げたシスティーナ礼拝堂を見て、老人の肉体がまるで若者のように書き上げていることを批判したと言われている。

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左はミケランジェロシスティーナ礼拝堂に描いた描いた『アダムの創造』の神で、右はダ・ヴィンチが書いた『荒野の聖ヒエロニムス(未完)』である。ともに老人をモチーフにしている。ミケランジェロの方はまるで若者の肉体のように力強く筋肉隆々に描かれている。しかし、ダ・ヴィンチの方は筋肉質ではあるが細く鍛えた老人という感じで明らかに老人の肉体と言える。この様にダ・ヴィンチは解剖に基づいたリアリティを追求した。

ダ・ヴィンチが発見した内回と外回

布施先生の話では、ダ・ヴィンチが最初に発見したのではないかと思われる肉体的な現象を挙げている。それは私たちの腕に隠された秘密である。腕の前腕(手首からひじまで)には尺骨と焼骨という2本の骨がある。これが、手の仰向けと内向けの場合で骨がクロスする。ダ・ヴィンチのスケッチにはまさにこのことを描いたスケッチが残っている。つまり、この骨の構造をダビンチが発見し人類でいちばん最初に記録に残したと言える。

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親指が外に向く状態が回外(かいがい)という内向きの場合を回内という。

ではなぜ、先生がその様に思いついたのか。さらに驚く理由である。 

 最後の晩餐に隠された秘密

最後の晩餐には多くの秘密があり、十数年前に公開した『ダ・ヴィンチ・コード』でも多く登場している。このブログでも一度取り上げている。

noriyasu-katano.hatenablog.com

 さらに、布施先生は新しい解剖学者らしい発見をしている。

最後の晩餐は中央にキリストを配置し、左右に6名づつ弟子を配置している。キリストが処刑される前に弟子との最後の食事のシーンで、キリストが「この中に私を裏切る者がいる」と予言した直後のシーンである。驚き慌てている弟子たちが今にも動きそうなポーズで描かれている。さらに、それぞれの手の動きや顔の表情で一層その驚きを表現している。そして、この手の動きが先ほどの話に繋がる。

画面左の6名の弟子は全て回内で描かれて、

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左の6名は回外で描かれている。

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そして、中央のキリストは右手を回内で、左手を回外で描かれている。

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ここまではっきりと明確にかき分けているということは、ダ・ヴィンチが回内と回外の腕の違いをはっきりと理解していたのではと思わせる。

一瞬、聖ペテロのナイフを持った手が回外かと思ったけど、回内の状態で手を後ろに回しているので、回内であることがわかる。 ただ、分からないのが、明確に左と右の演出を描き分けた理由である。『ダ・ヴィンチ・コード』の様に大きな謎を描き込めたのであれば、これを描き分けた理由もあるはず。ダ・ヴィンチが腕の構造に秘めた想いが何かあるのかもしれない。 

体の中の美術館―EYE,BRAIN,and BODY

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