朝の日差しが差し込み起床した。洗面台に向かい、鏡を覗き込む。奥歯に仕込んだICチップから、就寝時の状態が表示される。やはり昨日の酒が効いているのかいびきをかいているらしい。
「ちょっと飲みすぎてるな」
鏡には、アルコールが3割り残っていることが表示されている。
すぐに鏡の右端に二日酔いに効くドリンクの広告が表示される。
「定番のヘパか。」
広告の購入ボタンをタップして、洗顔をした。
そして、寝る前に充電をしておいたコンタクトレンズ方のデバイスを目に装着した。
起動画面が視野に広がり虹彩認証でロックが解除された。
先ほど表示された健康状態アプリとドリンクの広告が再度表示された。
「このアプリもしつこいんだよな。広告、閉じて」
充電エリア近くのイヤホンからピカッと光り、視界からアプリが消えた。
部屋には碾きたてのコーヒーの匂いが立ち込めた。時間設定したコーヒーメイカーが作動しコーヒーがいれられている。
スーツに着替えながら、コーヒーをすすった。
コンタクトをつけてから、数分ごとにメール受信の知らせが流れてきている。大半がジャンクメールだ。タイトルだけを確認するとすぐに次のメールが流れてくる。
両方の人差し指に黒いサックをはめ、先ほどのイヤホンを耳に装着した。
「Facebook」
視界にFacebookのタイムラインが流れる。左手の人差し指にはめたサックの上に親指を置き軽くスライドした。画面のタイムラインが下にスクロールし始めた。
気になる記事で、親指を止めてタップした。
「さて、行くか」
歩きながら、会社からのメールを確認している。追い抜いて行く人のやむかってくる人をかわしながら駅に向かった。人が近づくたびに、視界にはその人をスキャンした人型のラインが度々現れる。
メールから目を離し、追い抜いた男性の鞄に目をやった。鞄がスキャンされ、すぐさま商品情報が表示された。
「かっこいいけど、高いな。安いのを探して。」
しばらくローディング画面が表示され、検索結果が現れた。
「やっぱ、いいや」
駅近くのコンビニが近づいてきた、朝食を注文していないことに気づき急いでオーダーを始めた。
「やべ、注文していない。えーっと、今日は何にするか、カフェラテと水、あと、チョコの菓子パン、いつもの」
オーダー完了の表示が現れ、コンビニの窓口に並んだ、顔認証を済ませると、頼んだばかりの商品と今朝頼んだヘパリーゼが袋に入って渡された。