Noriyasu_Katano's blog

脳科学や量子力学、政治や戦争に関して、日々の感じた雑感を書いていきます。

日本文化におけるいくつかのテーマ〜『日本人の性格構造とプロパガンダ』

この本は第二次大戦末期にイギリスの社会人類学者が日本人を研究したレポートをまとめた本になります。前回は第一章となる「日本人の性格構造とプロパガンダ」をまとめました。

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前回の内容にも書きましたが、この本を読むとアメリカが第二次大戦で日本を完全に支配しようとしていたこと。さらに、いろいろな研究者と共に日本人を洗脳していた事がよくわかります。実際、この本では学者が当時のアメリカ政府に対して日本人に対するプロパガンダの方法を具体的な手段で提案している内容も記載されています。 第二章にあたる「日本文化におけるいくつかのテーマ」では、レポートの著者ジェフリー・ゴーラーが自分の研究コンセプトとそれにより導き出された日本人の中にあるテーマをまとめています。

社会人類学の原則

この章ではゴーラーが考える社会人類学の12個の原則に基づき研究をおこなったこと、そして、その原則から導き出された日本人のテーマを記述しています。 なぜわざわざこの原則を話す必要があるのかを考えると、ゴーラーは日本に訪れた事がありません。前のシリーズでもまとめた『菊と刀』の著者ルース・ベネディクトもまた日本を訪れた事がなく周囲にいた日本人と日本に関する文書からまとめています。 つまり、この章はある意味「日本に行かなくてもこの原則にもどずけば研究ができ、その結果は正しいものです。」と言いたい事だと思います。

  1. 人間の行動は理解可能

「表面的に辻褄が合っていなくても、その行動に十分な証拠があれば説明できる。」 これは日本人の行動は外国人からすると辻褄が合わない事ばかりですが、しかし、いろいろな状況証拠があればその行動に対して説明でき理解することができると言っています。

  1. 生存するための欲求(本能)はあるが、環境から受ける影響はその人間が成人した時の行動を形成する

日本人だけではなくどの国でもそうですが、本能自体は個々人みんな持っていますが、その人が成人になった時の行動は本能よりも環境から受ける影響が大きいと言っています。

  1. 同い年、同じ性別、同じ地位の同じ環境での行動は均一的である。

同い年、性別、同じくらいのステータスの人間は大体同じ行動をとる。大阪と東京と離れていても大体同じ時代に生きているなら同じ行動を取るって事だと思います。多分、これはアメリカにいる日本人でも日本にいる日本人でも、同い年、性別、地位であれば同じ思考だから、研究対象にして何ら問題ないということを言いたいのかと思いました。

  1. 親や社会の中の理想的な成人像が、子供に対しての躾の基準になる。

子供を躾けるときに必要になるのが、その子供の行動が正しいのか正しくないのかの判断だと思います。この判断の基準になるのが、躾をしようとする人間の理想像だと言えます。つまり、親が「子供にこうなってほしい」「〇〇のような人になって欲しい」という理想的な成人像があり、それを子供の躾をする判断基準になると言っています。 これが、親と子供の関係だけではなく、社会とその子供との関係もあります。電車の中で子供がはしゃいでいる場合、これに注意する判断基準もその行動を見かけた人(社会)の持っている理想像がもとになっているとなります。 つまり、戦争前、戦中の日本の社会には大きな理想像があった、それを社会は求めて子供のしつけとしていたという事が言いたいんだと思います。

  1. 賞罰を決めるのは常に社会であり、その賞罰の評価が習慣になっていく

これは原則4と似ていますが、行いに対しての賞罰は社会が判断して、その判断された賞罰が個人の習慣になっていくということです。

  1. 幼少期の習慣が後の学習にとって重要となる。

  2. 幼少期に学習とは

  3. 空腹をどのように満たすのか

  4. 適温をどのように保つのか
  5. 苦痛をどのように和らげるのか
  6. 先天的な欲求をどのように抑制するのか
  7. 恐怖や怒りをどうおさめるのか これらの事が幼少期に学習されると考えている

  8. 家族に対する態度がその後に出会う人々に対する態度の元になる

  9. 平時の成人の行動は、習慣化された行動もしくは願望からくる

  10. 9の行動や願望は幼少期の賞罰によって築かれる

  11. これらの行動や願望が国民の大多数に共有された場合、その国の社会制度となる

  12. これが宗教や政治的な組織まで同じような構成を作り上げる

この原則に基づきゴーラーは日本人の文化に3つのテーマを見出すのだが、この原則自体前提としてはどの国にも当てはまるような事を言っているが、日本を想定して作り上げた原則なのではと思う。自分のレポートの信憑性を上げるための後付けによるものではないだろうか。

3つのテーマ

先の原則を元にゴーラーは3つのテーマを日本の文化に見出す。

消化器系に関して

日本人は基本的に貧しく常に飢えているというのが前提にあるようです。幼少期は逆に豊富に食料を与られると考えており、欧米よりも事あるごとに母乳を飲ませているとしていきしています。これが、青年期になると一気に与られず空腹となります。しかし、日本の文化で空腹を悟られるのは恥という文化があるため、空腹を我慢するように学習しなくてはいけなくなります。 そして、食すると同じように排便に関しても日本は厳しく躾けられます。このことから消化器系に関する学習が日本人の根底にあると解釈しています。

両親に対する学習。特に男性が持っている母親に対する態度

これはどういうことかというと、日本の文化では男性が強く女性が弱いという構造が成り立ちます。今の社会だとだいぶ薄まっていると思いますが、いまだにこの意識を強調する人もいるかと思います。この構造は両親を見ることで、子供はその男女の構造を学習します。 そして、この強い物と弱い物の構造で世界を捉えていると考えています。つまりどちらか2つの立場しかなく同じ目線などは存在しないという考え方です。 この後ゴーラーが提唱するプロパガンダを強いるアメリカの立場もこの2つの立場を利用するように提案しています。日本は弱い女性として、アメリカは強い男性を演じることにより、日本を操作することができると考えていたようです。

自分自身が社会という集団から爪弾きにされる恐怖

日本人は幼少期から細かい事を学習していきます。それは正しい行動をする事を求められているためです。この環境で育つと自分自身も正しい行動を行わなければいけないと考え学習して成長していきます。この考えが家族間から社会に広がり国と広がっていきます。 そこで日本自体が正しい行動を行う必要があり海外から正しい存在として見られる必要があると思うようになると言っています。 さらに、この正しい行動をするためには全てを把握し管理する必要性が生まれます。そのため日本はそれを実施したと言うことになります。

ゴーラーは、アメリカで戦時情報局 OWI(Office of War Information)で1942年から1944年に集中的に日本人研究をおこなっています。たった数年間しか研究しておらず、さらに日本には訪れたことのない研究者が、遠い国から文献を元に日本文化を研究するのもなんとも異様な物だと言えます。 しかし、第三者の意見というのはよくよく的を得ている部分もあり、極端な捉え方ではありますが、ゴーラーが見た日本文化も1つの見方だと言えます。これらのゴーラーのレポートが後の日本占領に大きな影響を与えることになります。