Noriyasu_Katano's blog

脳科学や量子力学、政治や戦争に関して、日々の感じた雑感を書いていきます。

山本七平の『空気の研究』を読んで

AIR!

随分前に山本七平の『空気の研究』を読んだ。こういうエッセイを読むときは、その作者がどの時代を生きていた人で、その本がいつ出版されたのかが重要になってくると思います。著者山本七平は大正10年に東京で生まれて、青山学院高等商業学部を卒業し、昭和33年に山本書店を創立されたそうです。この本は1983年に初版が出版されたようです。 1983年は私の世代にとっては非常に重要なアイテムの「ファミリーコンピュター」が発売された年です。そう考えると、これから日本が一番楽しいバブルの時代に突入する直前といった時代だと思います。 そこから、47年の2020年のコロナ禍でこの本は再注目を浴びました。コロナ対策に対して「忖度」をする官僚という図式で、「空気を読み過ぎている日本人」というのが色々と話題に上がりました。

コロナだけではなく、この本は日本人の「空気を読む」姿勢を鋭く批判しており、事あるごとに話題に上がっていると思います。

冒頭のインタビュー場面

この本の冒頭はある出版社の記者とのインタビューから入ります。インタビューの内容は「道徳教育」についてです。 ちなみに、なんで1983年に「道徳教育」を題材にインタビューを行っていたのか調べてみると、1977年に学習指導要領が改訂されて、その時に道徳教育を強化するようになったようです。そして、1980年ごろから校内暴力が増えてきたという記事も見かけました。『金八先生』は1979年に放送が開始されています。

二 昭和五十年代の道徳教育の施策:文部科学省

このような背景からインタビューで「道徳教育」を取り上げるのもよくわかります。道徳教育への意見を求められ、著者は、これからの時代、道徳教育の必要だと回答します。そこで記者は「ははあ、では道徳教育に賛成ですな。いまは、大体そういう空気ですな」と答えます。この時点ですでに記者は先に説明した時代の空気を読んだ発言をしています。さらに続けて質問します。「では、どのような点から始めたら良いのでしょう?」山本は、「日本の道徳は差別の道徳である、という現実の説明からはじめればよい」と回答します。 これが、空気を読んだ記者の考えとは異なり「そんなことを言ったら大変なことになります。」と回答する。

これがこの本の冒頭です。

多分、この当時日本の景気が良くなる反面、別の問題が見えにくくなっていた時代のように思います。女子差別撤廃条例などあったり、東北大学機関リポジトリでは1980年代は「差別語問題エスカレート期」と記されています。こういう時期だったので、記者はその様な反応をしたんだと思います。

女子差別撤廃条約 | 内閣府男女共同参画局

著者の考えを推測

一般的にこの本が話題になるのは、ブログの冒頭でも述べているように日本人がなんか訳のわからない「空気」を読み過ぎているというところです。著者もそれを危惧しており、それはその当時に始まったことではなく戦中も同様にこの空気により大きな決定がされてきたと述べています。確かに、世界大戦に突入していく日本の話とかを読んでいると、「絶対勝てない」ってわかっていたのに何故か戦争を始めたりしています。

ちょっと待って

ただ、これってよくよく冷静に考えてほしいのが、日本人の特徴じゃないと思います。前回のブログで書かせていただいた『Don't Look Up』の映画でもそうです。アメリカでも同じようにみんな「空気」に流されているんですよ。なんか、こうやって人の事を考えすぎるのは日本人だけとか言ってしまうけど、そんな事はない、人間誰しもが同じだと思うんです。

noriyasu-katano.hatenablog.com

今、はまっている『スキンウォーカー牧場』の調査チームのやりとり見ていても、みんな空気読んでいます。

多分、重要なのは空気を読んで行動することは悪ではなく、日本人の問題は、自分と違った意見が出てきた時の対応が下手クソな人間が、人の上に立っている割合が多いっていう点です。大抵の大企業の上司と言われる人間の多くが、自分と違った意見が出るときに必ず否定するケースが多く、意見を交わせる状況を作らない場合が多いと思います。

この本では、空気の研究に次に「水=通気性の研究」というテーマも含まれています。水を刺すことが上手くできればもっと良くなるような気がします。