万物の根源が量子だとしたら、その量子の振る舞いは、大きさにかかわらず共通して表れるのではないだろうか。物体が量子から大きく拡大していく中でどこのタイミングで量子の現象がなくなり古典物理の法則に縛られていくのだろうか。
『量子力学で生命の謎を解く』はその量子力学と生物学を合わせた「量子生命学」を紹介している。
- 作者: ジム・アル-カリーリ,Jim Al-Khalili,ジョンジョー・マクファデン,Johnjoe McFadden,水谷淳
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2015/09/16
- メディア: 単行本
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多くの科学者の考えは、本の最初の章でも紹介されている。
量子の世界の法則が生物の体内の微小スケールでも作用しているのは確かに間違いないが、それはその微小スケールだけでの話であって、生命にとって重大なスケールのプロセスにはほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさないということだ。
DNAや酸素などの生体分子は陽子や電子といった素粒子からできており、その素粒子は量子力学に支配されている。しかし、我々はそれをまったく感じていなく、古典物理の法則で支配されているように感じる。なぜだろうか?
量子の振る舞いこそが人の振る舞いに影響している
そもそも量子力学に支配された世界では、障害物をすり抜けたり、同時に色々な場所に同じ物が出現していたり、遠くに離れたものがテレパシーのように同じ動きをしたりしています。しかし、実際の世界ではそんなことは起きていない。それは、大きな物体のなかの粒子の動きによって制御されていると言える。
しかし、最近量子の現象が小さな世界以外でも起きていることが発見されている。量子力学の重ね合わせやトンネル効果といった現象は、植物が太陽光を捕える仕組みから、我々の細胞が生体分子を作る仕組みまで多種多様な生命現象で見つかっている。
こちらは、著者の一人ジム・アル=カリーリのTEDでの公演である。
量子力学こそがこれからの社会になる
著書の中で一番驚いたのが、私たちの嗅覚が臭いを嗅ぎ取るメカニズの話である。一般的に、嗅覚はそれぞの分子を受け取る鍵と鍵穴によって臭いを嗅ぎ分けていると言われているが、これは形が似たような分子構造を持っていても臭いが同じとは限らないようだ。
そこで、考えられているのが分子の振動によるものだ。臭いにも電磁波のように振動がありそれぞれのヘルツによって臭いが違うのではと言われています。まだ、解明されていない部分もあり、振動と構造の両面から研究が進んでいるらしい。
今まで、臭いが振動という発想はなく、この話を聞くと量子の振動つながりを深く感じる。しかし、まだ量子力学に基づいた検証はできていないようだ。もし、臭いという感覚が量子力学との結付きがあったとしたら、なんとも神秘的に思える。
動物などは臭いによってお互いの感情を伝えあう。犬ななどはマーキングし自分の臭いと他の臭いによって情報を交換している。これ以外にも視覚情報や聴覚他にも、一部の渡り鳥や昆虫たちが感じる磁気など、すべての根源に量子力学が絡んだでいたとして、さらに、その振る舞いが知覚に大きく影響していたとしたら、私たちが意識で感じている知覚の認識も大きく変わるかもしれない。
オカルトの話が科学として証明される日も近い
すぐそばに自分の体内のとても小さな小さな感覚器官で、常に量子の影響を受けているが、その影響は意識には届いておらず、認識することができない。しかし、その影響がより明確に何らかの方法で認識し意識することができれば、今までオカルトとされていた現象がもしかしたら事実として証明される日も近いと思う。
新しい量子生物学―電子から見た生命のしくみ (ブルーバックス)
- 作者: 永田親義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/02
- メディア: 新書
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