ルミネがスペシャルムービーとして2015年3月に公開したCMの内容が酷いとネットで広がっている。当のルミネもサイト上で謝罪をしている。
内容は主人公の女性が自分の「需要」というものに気づき、その「需要」をルミネで新しくしてみませんかというようなシリーズのCMになっている。その出だしの第1話で大きく踏み外してしまった。
「セクハラ」のオンパレード
第1話の話は仕事にちょっと疲れた主人公女性の出社シーンから始まる。出社の途中会社の入り口で男性上司と会う。挨拶を交わすなか、上司が「顔が疲れているなぁ。残業?」と声をかける。「普通に寝ている。」と回答して、上司が「寝てそれ?」返す。
この後、主人公よりも若い女性が現れ、上司に挨拶する。立ち去った若い女性を見ながら、「かわいいなぁ」と呟く、主人公に気づいた上司が、フォローのつもりで「大丈夫だよ。お前は需要が違うから」と今回のキーワードを捨て台詞としていって立ち去る。
主人公は「需要が違う」ことに気づき、反省をするシーンでCMが終わる
(2015年3月21日時点の動画になります。すでに非公開にされているかもしれません。)
私の説明も極力中立的な立場で内容を記述しようと思いますが、もしかしたら、偏見が含まれているかもしれません。
問題となるのは、最後のオチの部分だと思います。これほど、差別的な発言を受けても主人公は真摯に受け止め、「需要」というものを考え始める。最後の主人公の言葉は「最近サボっているからな」という心の言葉で終わる。
あまりぱっとしない差別上司に対して怒るのではなく、自分を避難する姿勢をみせることに多くの女性が批判している。
上から目線の表現
もちろん、このCMは誰かが意図的に製作し、企業が自分たちの広告としてリリースしています。動画の製作工程では、脚本が作成され、キャスティングが行われ、撮影が始まります。この都度、クライアントの確認が必ず入り、広報担当や関連事業部などの確認も入っているはずです。
この段階で誰もこの表現に対してNGを出していないことになります。たぶん、製作サイドとしては「素直な女性像」「謙虚な女性像」というものを打ち出し、それを強調するために「嫌味な上司」というのを作り出したのだと思います。
最後にはそんなあなたもルミネで変わってみないかと問いかけているが、一貫して見られるのが全て上から目線の表現だと思います。
全シーンを通して「今の働く女性ってこんな状況でしょ」「嫌な上司ってこんな男性でしょ」と言っているように感じます。
問われる製作サイドの品格
つくづく思うのですが、これだけの企業が発表した内容でルミネ自体のことを宣伝しているCMだから、発表までには多くのチェックが入っているはず、なのに、それが公開されてしまっている。広報含め製作会社の品格が問われます。たぶん、作っている人は多くのことを考えて、「変わらなければいけない」「もっとインパクトを出さなければいけない」と考えた結果だと思います。しかし、普通の常識があれば、いくらなんでもこのような言葉を女性に対して使うのは今の世論を考えれば容易に思うと思います。
つまりは、製作サイドの配慮のなさと世論への常識がかけ離れているんだと思います。もしかしたら、製作の職場では当たり前のようにこのような状況があるんだと思います。なので、この状況がそれほどおかしくないと判断しているようにも感じます。
TV局のAD(アシスタントディレクター)などの扱いはこの扱いと同じだと思います。つまり、この舞台になっているのは製作に携わっている環境であれば、それほどおかしくないという反応もあるんだと思います。
しかし、それは今回の世論の反応を見ても異常な環境であることを理解する必要があると思います。
女性が進出できない根源
このCMが公開されてしまう環境がまだ日本にのこっている、この事実が女性が進出できない根源だと思います。たぶん、中には笑いながらこのCMを見ている男性もいるかもしれません。日常的に見た目を評価・批判する文化がまだまだ残っている。
そして、それを「需要」とした表現は人をモノと捉えてる考えだと思います。こんなことにも気づかない製作サイドと企業としての品格が地に落ちていると思います。
2011年にはルミネの社長が自殺をしていることがあったそうです。こちらのまとめを見るとルミネ側と店子との関係があまり良くないこともまとめてあります。
ルミネの広告は多くの女性から評判を受けていました。
ここまでに積み上げた物が今回のCM によって崩された感じがします。
モノを作る人間の端くれではありますが、常に多くの意見や価値観を考慮して、クライアントにとって最善の表現を提供できればと思います。今回の件はものを作る人間として最低限の品格が抜け落ちていたような気がします。