Noriyasu_Katano's blog

脳科学や量子力学、政治や戦争に関して、日々の感じた雑感を書いていきます。

映画『誰も知らない」

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photo by h.koppdelaney

柳楽優弥の演技がものすごくうまいと思いました。

基本的に出ている人の演技はうまかった。youの演技は今ひとつだが、あの歳であれだけのかわいさを表現できるのはあの人くらいしかいないだと思います。

しかし、彼の演技には引き込まれる物がありました。映画自体の話がこどもの持つ危うさを表現したものだからなおさら、「最後はどうなってしまうのだろう」という疑問をもち最後まで見てしまった。時間的に長い映画ですが、飽きることなく見る事ができた。

この話は、親に捨てられた子供達の話で、学校にも行けず自分たちの日々の生活を淡々と続け、けなげに生きている様を映画としたものです。簡単に書いてしまいましたが、実際戸籍にもない子供なんていくらでもいるように思いました。もちろん生きる過程でその事が表にでて発覚するからここまでのケースは稀だと思います。しかしホント痛感したのは子供は親を選べないという事です。子供は親がいなくても生きていこうとすることだと思います。

 you演じるだめな母親はいろいろな相手と子供をつくり自分の幸せを求だけを求めていきます。彼女は子供に対して明るく優しい母親を演じていますが、彼女は母親になりきれていないようにも伺われました。わざとそのように演技しているのか、私にはとてもぎこちない家族の会話に見えてしょうがなかったです。また兄弟同士もその見えない壁を感じさせる演出でした。なんとも言えない、ホント危ういとしか言いようがない映画です。

彼らの幸せはどこにあるのだろうと感じました。学校にもいけず、まともな教育を受けられない状況で、対話が成立するのは母親と兄弟だけです。幸せ自体の価値観ってどこで生まれるのかなと疑問に思いました。

子供を残して去っていった母親は、たぶんまともな教育を受け、衣食住のある環境にいます。そして彼女の幸せは自分を幸せにしてくれる男性を探し求めることだけでした。では、子供の幸せって何だったんだろうと思います。一日暮らす事に一生懸命に生きている子供達、柳楽優弥演じる長男は常に兄弟の面倒を見ています。自分の幸せを次にまわし兄弟に尽くしていました。彼の幸せはどこにあるのだろう、小さい兄弟は母を求め、次第に現実を受け止めていきます。 

そして彼らは彼らの生活を始めていきます。結局誰かの幸せの裏に誰かの不幸があるってことでしょうか。また単純に幸せという言葉が欲望としか受け止められないのはなぜだろう?親の欲望?子供に生きる知恵がないから不幸なのか?僕は単純に子供を置いていった母親、女性が悪とは言い切れない気がします。

もちろん、倫理的な意味で悪とされてしまうと思いますが、人が欲(幸せ)の為に生きる事は決して反人間的行為とは思えないです。自分が生きてきてだんだんと心境が変わってきています。20代前半では絶対間違っている事とかが今となってはそんな事はなく素直に受け入れ行動できる自分もいます。

つまり、欲望(幸せと思う)の対象が広がりいろんな事に対して受け入れられるようになったのだと解釈しています。そのバランスがやはり大事なんだと思います。母親はもう少し考えて相手の男性を選ぶべきだったと思うし、単純に失敗した結果が子供だったとは言い切れないと思います。

ここまで書いて思いつく映画が新藤兼人監督の「母」です。この映画もなかなか落ち着かない娘に母親が再婚相手を見つけさせるという内容です。いままで好き勝手に行動した主人公の女性はその男性との営みを受け入れていく話ですが、何となくだぶる感じがしました。もちろん、演出や話は全く違うのだが、コアな部分での共通点があるように思えました。

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 「成長する事=妥協する事」この原理は根本的同じ価値を含んでいるように思いました。妥協(成長)できずにいる女性が子供を捨ててしまいます。 

最後に一つ。この映画で演出的に思った点があります。冒頭で流れるBGMと本編の途中で流れるBGMが同じ物を使用していますが、使われている状況が全く違っている事がとても印象的でした。冒頭では、新しい新居に家族が引っ越して明るく新しい生活への希望が満ちあふれている絵なのですが、途中で使われているシーンは、母を待っていた駅から母に会えず家路につくまでの道で印象的に使われいました。

私は以前から音の方が絵よりも心情をより表現できると思っていましたが、このように同じ音を使ってしても違う絵によって受け捉え方が違と思いました。絵の方がより心情を伝えているように思えました。

やはり、心情は一つの感覚器官だけで伝えるものではない事に気づかされました。 

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