Noriyasu_Katano's blog

脳科学や量子力学、政治や戦争に関して、日々の感じた雑感を書いていきます。

原研哉というデザイナー-『デザインのデザイン』<その5>

Poster for Kenya Hara (supplement)

原研哉氏のデザインに対する考えは面白いです。

私のような者が言うのもおこがましいですが、この本を読んでいるとより原研哉を知りたくなってきます。氏はデザインする事をこの「五感」を利用した「情報の建築」と述べています。五感から受けられた情報は脳内で「記憶」という素材も受けながらイメージを建築していきます。つまり、我々の持っている体すべてが情報の入り口になりイメージを構築していくと考えています。

氏の行った仕事は常にそれらを意識したものです。「長野オリンピック開会式プログラム」では日本語を縦組にし、欧米語を横組にした左開きのレイアウトを施しました。このレイアウトは国際的な採点の印刷物としては初めての試みだそうです。表紙にも工夫をこらし、印刷する紙を雪に見立てデボス(文字を凹ませる技法)でプログラムのタイトルを記述してあります。このイメージは雪に足跡が残るイメージで「冬季オリンピック」をうまく表現していると思います。

また、山口県光市にある梅田病院の院内デザインは、病院の持つ本来の意味「治し癒す所」を優しく表現しています。最近の病院ではあまり見かけなくなったが、一般の病院のイメージは暗く冷たい感じがあます。しかし、原研哉は「布」を使う事でこのイメージを払拭しました。彼は院内のサインをすべて白い布を使って制作し、サインは取り替えができて汚れたら洗うことができるようにします。そのためスタッフは汚れたら洗わなくてはいけなくなります。つまり、スタッフが毎日清潔に院内を保たさせる事が病院の質にも繋がるからです。 もし、布のサインが汚れていたり、破れていたりしていたら、この病院は不潔でいい加減だと思われます。

この布はそんなバロメーターにもなっています。また布の持つ安心感や優しさは、けがをしたりお産の前の緊張した心を撫でてくれます。 その他にも本中では彼の仕事に対しての考えが記載されています。仕事は本当にすべての感覚器官を刺激していると思います。デザイナーはクライアントの持っている情報を受け手に伝えなくてはいけないと思います。時にそれは強い表現で強制的になり過ぎ、まったく伝わらないこともあります。また、受け手を気にしすぎて表現しきれない事もあります。 しかし、原研哉氏は情報を100%伝えるだけではなく、それ以上の物を常に表現し伝えようとしていると思います。それにより情報がさらに活かされていると思います。 

デザインのデザイン

デザインのデザイン

 

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